Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しのぜんご

死の前後

豊島 与志雄

Lesen Sie 死の前後 (しのぜんご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.273 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

あんたは、丁度だから、十年たてば、三十……女の二十と三十とは、たいへんなちがいですよ。その時になって、あわてても、貯金がなくては、どうにも出来ません。わたしなんか、活動ひとつ見るじゃなし、買い食いなんてことも、一度もしたことはありません。それでも、やれ歯が痛いとか、風邪をひいたとか、なんとかかんとか、人間の身体というものは、お金がいるように出来ています。それから、ふだんの心掛け……。肌襦袢とお腰と紙だけは、白いきれいなものを使わなければ、女の恥ですよ。襦袢の襟が汚れていたり、黒い浅草紙を使ったりしてごらんなさい……みられたものじゃありません。なに、いくらもかかるものですか。わたしだって、そうしたなかから貯金をしてきたんです。貯金をするったって、あの世にしょっていくためじゃありませんよ。いつか一度、生きているうちに、きっと役にたつことがあるもんです。わたしに貯金がなかったら、あの娘はどうでしょう……。役にたったんですよ。十年間の苦労が、役にたったんです。もうこれで、わたしは何にも思い残すことはありません。ほっとしました。それが、まだあの娘には分らないんですからねえ……。