Japanische Klassiker mit Furigana
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しご
死後
Lesen Sie 死後 (しご) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.956 Zeichen · 6 Bildschirme
妻は茶の間の縁側に坐り、竹の皮の鎧を拵えていた。妻のいまわりはそのために乾皮った竹の皮だらけだった。しかし膝の上にのせた鎧はまだ草摺りが一枚と胴としか出来上っていなかった。
「子供は?」と僕は坐るなり尋ねた。
「きのう伯母さんやおばあさんとみんな鵠沼へやりました。」
「おじいさんは?」
「おじいさんは銀行へいらしったんでしょう。」
「じゃ誰もいないのかい?」
「ええ、あたしと静やだけ。」
妻は下を向いたまま、竹の皮に針を透していた。しかし僕はその声にたちまち妻のを感じ、少し声を荒らげて言った。
「だって櫛部寓って標札が出ているじゃないか?」
妻は驚いたように僕の顔を見上げた。その目はいつも叱られる時にする、途方に暮れた表情をしていた。
「出ているだろう?」
「ええ。」
「じゃその人はいるんだね?」
「ええ。」
妻はすっかり悄気てしまい、竹の皮の鎧ばかりいじっていた。
「そりゃいてもかまわないさ。俺はもう死んでいるんだし、――」
僕は半ば僕自身を説得するように言いつづけた。
「お前だってまだ若いんだしするから、そんなことはとやかく言いはしない。ただその人さえちゃんとしていれば、……」