Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はは

母

宮本 百合子

Lesen Sie 母 (はは) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.021 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

父は貧乏の中を外国へ行っていたので、二十七八歳であった母は五つの私を頭に三人の子供を育てながら、父が帰朝して子供らを無事にわたしたらそれで死んでもいいという心持で、その日その日をがんばって暮していたのであった。

夜になると大きい父のテーブルの上に、その時分の子供の目にはいかにも綺麗で明るいニッケルの台ランプを灯し、雁皮を横に二つ折りにたたんで綴じたのへ、細筆で細かくロンドンにいる父への手紙を書いていた母の横顔は、なんと白くふっくりとしていただろう。三人の幼い子供たちに腰のまわりをかこまれて、立ってオルガンをひきながら、若々しい声を張りあげて「青葉しげれる桜井のウ、さアとの訣れの夕間暮」とうたっていた母。子供たちをよろこばせるためというよりも、もっと自分が楽しんで、その時分の母は、よく絵を描いていた。母は『新小説』だの『女学世界』だのという雑誌を毎月とっていて、そういう雑誌の口絵には洗崖などという画家が、マーガレットに結った女学生が野原を散歩しているところなどを描いたのがついていた。気に入った絵があると、母は、雁皮紙をその上にのせ、丁寧にしきうつしをして、後から色だけを自分のこのみに従って塗っていた。