Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ははのじょうきょう
母の上京
Lesen Sie 母の上京 (ははのじょうきょう) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.655 Zeichen · 33 Bildschirme
十八の娘は、闇の女でも、花があつた。然し、夏川には、花がない。俺の住むところは、どこなのだらう。冬の枯野なのだらうか、沙漠であらうか。何よりも、俺自身は何者であらうか。何のために生きてゐるのであらうか。
あるとき、夏川は臆面もなく娘を口説いたものだ。これから泊りに行かう、といふわけだ。娘はクスリと笑つて、
「よしてよ。もう、そんなこと、言ふものぢやアないわ」
「だつて、どうせ誰かと泊りに行くのだらう」
「でも、オヂサンとは、だめよ。もう、そんなこと、言つちやいやよ」
「なぜ、だめなんだ」
「なぜでも」
娘は笑つてゐる。それも亦、まぶしいほど爽やかな笑ひであつた。
そのときも、然し、娘はやがてまじめな顔になつて、かうきびしく附けたしたものだ。
「オヂサン。お母さんと関係しちやいやよ」
「だからさ。君と泊りに行かうといふのぢやないか」
ところが夏川はその言葉を言ひ終らぬうちに棒を飲みこんだやうになつてしまつた。娘の顔色が変つたからだ。今にも泣くのかと夏川は思つた。然し、さすがに花柳地に育つた娘で、さうだらしなく涙を見せるやうなことはしない。唇をかみしめて俯向いたが、昔風に言へば、肩が泣いてゐたとでも云ふのであらう。