Japanische Klassiker mit Furigana
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ははのじょうきょう
母の上京
Lesen Sie 母の上京 (ははのじょうきょう) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.655 Zeichen · 33 Bildschirme
その姿の麗しくみづみづしいのは、女のやうななで肩で、細々と痩せ身のせゐであつたらうが、フンドシ一つではとんと河鹿が思案にくれてゐるやうで、亡者が墓から出てきたばかりのやうに土の上にションボリ坐つてゐる。
夏川は目がさめて、慌てゝ身体を起すと、先づ、つゞけさまに、七ツ八ツ嚔をしたものだ。すると忽ちそれに応ずる響の如くにヒロシが嚔を始めたが、七ツ八ツどころか、十五、十六となり、二十、二十一となつても、まだ口をあけてハアハアしてゐる。あげくに五寸もある洟水がぶらりぶらりと垂れてきたのを、手でつらゝをもぐやうに握りしめたが、こゝまできては古典芸術の修練も如何とも施す術がないやうだ。
「ヒロさん。風をひいたやうぢやないか」
「えゝ、ナアさん」
ヒロシは蚊の鳴くやうな声をふりしぼつて答へた。
「いかゞですか。お身体にさはりやしませんでしたか」
「私もいくらか風をひいたかも知れない。それにしても、私たちは、どうしてハダカなんだらう?」
「あら、ナアさん。あまりですわよ。御存知ないのですか」
「いや、なるほど。あゝさう/\。なるほどね、思ひだしたよ」
さすがに夏川も腕を組んで(なに寒くて、腕を組まずにゐられないのだ)千丈の嘆息をもらしたものだ。