Japanische Klassiker mit Furigana
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ははのじょうきょう
母の上京
Lesen Sie 母の上京 (ははのじょうきょう) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.655 Zeichen · 33 Bildschirme
男三人の兄弟の兄と弟が戦死して、まんなかが焼夷弾の直撃で死んだといふ、気の毒は気の毒だが、因業爺で、その二階の一室。唐紙ひとつ隣の部屋にオコノミ焼の母と娘とヒロシの三人がゐるのである。オコノミ焼の女主人は因業爺の姉の子に当るのだが、お前さんの母親はな、私の苦しい時に一文の助けもしなかつたものだ、と、今では邪魔にしてゐるが、焼けだされてきた当座は懐に金があるのを睨んで厭な顔もしなかつた。水商売の女のことで、その頃は応分の御礼を惜しまなかつたからだが、坐してくらへばといふ諺のせゐではなしに、敗戦後は金の値段が一桁以上狂つたから、その所持金はたかの知れたものになつてしまつた。
オコノミ焼の娘がいつ頃から闇の女になつたのだか、夏川はくはしいことは知らないが、娘自身は芸者になりたかつたのださうで、母親は妾にしたかつたのだが、因業爺がくどく言ふので闇の女になつたといふ。それは母親の愚痴話だ。芸者になるには着物がない、着物だ何だと自分の入費ばかりで一文も親の身入りにもならないといふ因業爺の説であり、妾だなどと旦那の物色は金持の先の知れないこの節はやらないことだと云つて闇の女をすゝめたといふのだが、娘は十八、闇の女にはもつたいない美人であつた。