Japanische Klassiker mit Furigana
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ははへのついぼ
母への追慕
上村 松園
Lesen Sie 母への追慕 (ははへのついぼ) von 上村 松園 (うえむらしょうえん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.091 Zeichen · 5 Bildschirme
渡って、母を迎えに行ったのであるが、そのときは雪が降って寒い晩であった。
子供の私は泣きたい思いで、ようやくに親類の家の門まで辿りつくと、ちょうど母がそこを出られるところであった。
私が、
「お母さん」
と、泣き声で呼ぶと、母は、
「おう、迎えに来てくれたのか、それはそれは寒いのになあ」
と言って、私のかじかんだ冷たい両手に息をかけ揉んでくれたが、私はそのとき思わず涙を流してしまった。
母の目にも涙が浮んでいた。なんでもない光景であるが、私には一生忘れられないものである。
私の制作のうち「母性」を扱ったものがかなりあるが、どれもこれも、母への追慕から描いたものばかりである。
母が亡くなってからは、私は部屋に母の写真をかかげているが、私も息子の松篁も、旅行にゆくとき、帰って来たときには、必ずその写真の下へ行って挨拶をすることにしている。
「お母さん行って参ります」
「お母さん帰って参りました」
文展に出品する絵でも、その他の出品画でも、必ず家を運び出す前には、母の写真の前に置くのである。
「お母さん。こんどはこんな絵が出来ました。――どうでしょうか」
――と、まず母にみせてから、外へ出すのである。