Japanische Klassiker mit Furigana
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けのゆびわ
毛の指環
宮本 百合子
Lesen Sie 毛の指環 (けのゆびわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.492 Zeichen · 9 Bildschirme
――何にも、まだ教えてくれないけれど……」
「――女優になるの?」
お千代ちゃんは黙って頸を下げた。その時、由子は、紅玉色の、硝子の、薔薇カットの施こされた簪をお千代ちゃんのたっぷりした束ね髪の横に見たのであった。
是非お千代ちゃんは神戸へ行かなければならなかった。由子は自分の髪の毛で、小さい三つ組を拵え、指環のような形にし、餞別にそれをお千代ちゃんにやった。
二三年後お千代ちゃんに再び会った時、彼女は銀杏がえしに結った芸者であった。――
稚かった自分に全然解らなかった生活の力が、お千代ちゃんを動かしていたことを理解し、由子は、高燥な夏の真昼の樟の香が鼻にしみるような心持になった。
由子は遠く山巓に湧き出した白雲を見ながら、静かに心の中で愛する紅玉色の硝子玉を撫で廻した。
後 記
この一篇を書き終った時、私の胸は別れて久しいお千代ちゃんの懐かしさで一杯であった。我が小さく拙い毛の指環よ。ひろい世の中へ出て行って、どこかで、どのようにか、彼女の生活を送っているだろうお千代ちゃんにめぐり遇え。