Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
ちょうど天気もよし、いっそ今夜行って見ようと、彼はふらふらとその気になった。別に用もないからだであるので、彼はそれから髪結床へ行って、その帰りに湯にもはいって来た。
今夜八橋に逢って、起請を焼いたわけも判って、次郎左衛門ももう来ないと決まったら、これから後はどうするか。やっぱりもとの通りに八橋との縁をつなぐか、それともあくまでも彼女の冷たい心を恐れてなんとか縁をきる工夫をするか。栄之丞もまだそこまではよく考え詰めていなかった。ゆうべの八橋の手紙と、きょうのお光の頼みと、自分自身の春めいた心と、この三つにそそのかされて、彼は唯うかうかと春の日の暮れるのを待っていたのであった。
先月は霜枯れで廓も寂しかったのは、この大音寺まえを通る駕籠の灯のかずでも知られた。いよいよ今が花の三月となっても、毎日の雨に邪魔されていたらしかったが、きょうは俄か天気で世間も俄かに春めいたので、日が暮れると表には駕籠屋の威勢のいい掛け声がつづけてきこえた。ひやかしのそそり節も浮いてきこえた。
栄之丞ももうじっとしてはいられなくなって、六つ(午後六時)を合図に家を出ると、十日のおぼろ月は桜の梢を夢のように淡く照らしていた。