Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
この頃は少しは強くなったか。三左衛門、盤を持ってまいれ」
三左衛門はすぐに碁盤を持ち出して来たが、外記はとてもそんな悠長な落ち着いた気分にはなれなかった。
「わたくしはこのごろ暫く盤にむかいませんので、とても叔父さまのお相手にはなれませぬ。どうかきょうは御免を……」
「見れば顔色もよくないようだが、気分でもすぐれぬのか」
「いえ、別に病気という訳でもござりませぬが……」
「病気でなくば一局まいれ。かえって暑さを忘れるものだ」
叔父はもう石を取り始めたので、外記も断わり切れなくなって、いやいやながら盤にむかった。五郎三郎も面白づくで碁を打っているのではなかった。いやいや相手になっている外記よりも、もっと忌な、苦しい、悲しい、切ない思いを胸の奥に畳み込んで、無理に悠長らしい顔をつくっているのであった。
妹や家来たちが恐れていた通り、外記はいよいよ募る放埒のたたりで、近いうちにかの甲府勝手を仰せ付けられることになった。本人はまだ知らないが、支配頭から叔父にはもう内達があった。この一家の上を掩っていた黒雲から、とうとう怖ろしい雷が落ちた。こうなることは内々予期していないでもなかったが、それを聞いた五郎三郎は今更のようにがっかりした。