Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
駕籠を出ると、彼は小走りに駈けて行った。呼び止められたのは、編笠をかぶった若い男であった。
「栄之丞さんじゃあございませんか」
編笠の男は宝生栄之丞であった。
「おお、次郎左衛門どの。また御出府でござりましたか」と、彼は笠をぬいで丁寧に会釈した。
「江戸が懐かしいので又のぼりました」と、次郎左衛門は笑った。八橋に変ることはないかと取りあえず訊いた。
臆病らしい態度で栄之丞は始終挨拶していた。自分も久しく無沙汰をしているが、八橋には多分変ったこともあるまいと言った。自分は浅草観音へ参詣した帰りで、これから堀田原の知りびとのところを訪ねようと思っていると言った。一緒に吉原へ行かないかと次郎左衛門に誘われたが、彼は振り切るように断わって別れて行った。
おとなしい男だと次郎左衛門はまた思った。従弟のなんのと言い拵えてはいるものの、彼が八橋の情夫であることは能く判っていた。かりにこっちでは何とも思っていないとしても、普通の人情として彼がこっちに対して快く思っていないのは判り切っている。けれども決して忌な顔を見せない。むしろこっちを恐れるようなおどおどした態度で、いつも丁寧に挨拶している。