Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
「世間に惚れ手もたくさんあらあね。姐さんばかりが女でもあるまい」
「悟ったもんだね」
「悟らなくって、こんな稼業ができるもんかね。姐さんはまだ悟りが開けないんだよ」
「そうかしら。だって、蛇は執念深いというぜ」
「蛇と人間と一緒にされて堪まるもんかね」
「よう、よう。浮気者」と、豊は反り返って手をうった。
「静かにおしよ。舞台へきこえらあね」
二人はだまって耳を澄ますと、舞台では見物の興をそそり立てるような、三味線の撥音が調子づいて賑やかにきこえた。
「姐さんはまったくこの頃は顔色がよくないね」と、豊は又ささやいた。
「癇が昂ぶって焦れ切っているんだもの。あれじゃあからだにも障るだろうよ。あんなにも男が恋しいものかね」
「浮気者にゃあ判らねえことさ」
「知らないよ。禿あたま、畜生、ももんじい」と、お花は扇を投げつけて笑ったが、また急に子細らしく顔をしかめて舞台の方を見かえった。
舞台の三味線の音は吹き消したように鎮まっていた。
「おや、どうしたんだろう」
見物のざわめく声が俄かにきこえた。舞台の上をあわてて駈けてゆく足音もみだれて響いた。一種の不安に襲われた二人は、思わず腰を浮かせて舞台の様子を窺おうとするときに、小女のお君が顔色を変えて楽屋へ駈け込んで来た。