Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
その上にお絹がまた病気引きということになれば、この小屋はあしたから休むよりほかはないと、関係の者はすぐにあしたの糧を気づかったが、こうなるとみんなも生き返ったような気になった。
「まあ、まあ、なにしろよかった。この二、三日はあんまり残暑がひどいからさ。おまけにこの楽屋はちっとも風がはいらないんだからね」
お辰は病める太夫の枕もとをそっと離れて、楽屋のうしろに垂れている荒筵を少し押し分けると、夕日の光りはもう山の手の高台に隠れて、下町の空は薄い浅黄色に暮れかかっていた。上流から一艘の屋根船がしずかに下って来て、大川の秋の水は冷やかに流れていた。近所の小屋もみな打ち出したとみえて、世間は洪水のあとのようにひっそりして、川向うの柳橋の桟橋で人を呼ぶ甲走った女の声が水にひびいて遠く聞えるばかりであった。
「それでも日が落ちると、ずっと秋らしくなるね」と、お辰はもとの枕もとへかえって来た。そうして、お絹の青ざめた頬に団扇の風を軽く送りながら、その力のないひとみを覗き込むようにして訊いた。
「気分はどうですえ。もういいの」
お絹はうなずくように眼をかすかに動かした。