Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
自分の源氏名の八橋にちなんだのであろう、金糸で杜若を縫いつめた紫繻子のふち取りの紅い胴抜きを着て、紫の緞子に緋縮緬の裏を付けた細紐を胸高に結んでいた。
「花魁。心持ちはもうようおすかえ」と、浮橋は摺り寄って彼女の蒼ざめた顔を覗くと、八橋はただひと言いった。
「浮橋さん。くやしゅうおざんす」
彼女は張りつめた胸をせつなそうに抱えて、蒲団の上に又うつ伏してしまった。苦しいのは判っているが、くやしいのは判らなかった。浮橋は黙って暫くその顔を見つめていると、掛橋が薬を煎じて持って来た。そうして、浮橋の袖をそっと曳いて廊下へ連れ出した。
「悪いことができいしてね。困ったものでおぜえすよ」と、掛橋は顔をしかめた。
十月頃からかの栄之丞がちっとも顔を見せない。手紙をやっても返事がない。呼びにやっても来ない。それで八橋はじれ切っている矢先へ、あいにくにまた悪いことが耳にはいった。店の若い者の伊之助がさっき馬道まで使いに出て、そのついでに観音さまへ参詣にゆくと、仲見世で栄之丞にぱったり出逢った。むこうは笠を傾けて挨拶もせずに行き過ぎたが、たしかにその人らしかったと家へ帰ってから何心なくしゃべっていたのを、禿の八千代が立ち聞きして、それを八橋に訴えた。