Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
なに、そうはしていられないと林之助は言ったが、さすがに振り切って起ちかねていると、お君はすぐ近所の鰻屋へ駈けて行った。
「林さん、新しい袷なんぞ着て粧しているんだね」と、お絹は仰向いて男の姿をながめた。
「むむ、これか」と、林之助は袷の膝をなでた。「そら、いつか話したことがあるだろう。この四月に新しく拵えて、一度も手を通さねえで蔵入りにした奴さ。秋風が立っちゃあ遣り切れねえから、御用人を口説いて二歩借りて、これと一緒に羽織や冬物を受けて来た」
「不二屋へ運ぶのが忙がしいから、身のまわりなんぞには手が届かねえのさ」と、お絹は笑った。「御用人さんに二歩借りて、それをどうして返すの」
「都合のいい時に返すのさ。まさか利も取るめえ」と、林之助も笑った。
「おまえさんにも都合のいい時があるのかしら。ちょいと、お前さん。この蒲団の左の下から紙入れを出して頂戴な」
言われた通りに林之助は紙入れを取って渡すと、お絹はそのなかから二歩を出した。
「暇を貰おうという矢先きに、借りなんぞあっちゃ拙いから、よくお礼をいって、御用人に早く返しておしまいなさいよ」
「だが、こっちも病気で物入りの多いところだろう」