Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
男の親切はよく判っているが、更に考えてみると、一体この人は自分の客であろうか。自分の客ならばともかくも、ほかの客が横合いから花代を払って勝手に帰れと命令しても、自分の客が承知するかどうか判らない。仲居もきっと承知しない。そんな掛け合いをするのは無駄なことであると思ったので、彼女はまずこの人が自分の客であるかないかを確かめようとした。
「お前さまのお相方はどなたでござります」
「おれは知らぬ。おれは今夜初めて誘われて来たのだ」と、男は無頓着そうに答えた。「そうして、お前は誰の相手だ」
「わたしも知りませぬ」
お染は今夜の座敷へ出たはじめから碌々に顔をあげたこともないので、自分の客の年頃も容形もなんにも知らないのであった。男は自分の相方を知らなかった。女は自分の客を知らなかった。
「おれの相方でなければ自由に帰してやることは出来ぬか」と、男もさすがに気がついたらしく言い出した。
「そうでござります」
「よい。そんならおれがお前を相方にする。そうして、勝手に帰してやる。仲居を呼べ」
それならば幾らか筋道が立っているので、お染は言われたままに仲居をここへ呼んで来た。