Japanische Klassiker mit Furigana
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かわあかり
河明り
岡本 かの子
Lesen Sie 河明り (かわあかり) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 49.244 Zeichen · 98 Bildschirme
娘はその後、二度程私の部屋に来た。一度は「ほんとに気がつきませんで……」といって、三面鏡の化粧台を店員たちに運ばせて、程よい光線の窓際に据えて行った。一度は漢和の字引をお持ちでしたらと借りに来て、私がここまでは持って来ないのを知り、「お邪魔いたしましたわ」といってあっさり去った。
私がまだ意識の底に残している、娘と何等かの関係ありそうな海好きの店員のことも、娘は忘れたかのように、すこしの消息も伝えない。私の多少当が外れた気持ちが、私がこの家へ出入のときに眼に映る店先での娘の姿や、窓越しに見る艀板の上の娘の姿にだんだん凝って行くのであった。私の仕事鞄は徒に開かれて閉されるばかりである。
私はだいぶ慣れて来た小女のやまに訊いてみた。
「お嬢さんはどういう方」
するとやまは難かしい試験の問題のようにしばらく考えて、
「さあ、どういう方と申しまして……あれきりの方でございましょう」
私はこのませた返事に微笑した。
「この近所では亀島河岸のモダン乙姫と申しております」
私の微笑は深まった。
「他所へお出になることがあって」
「滅多に、でも、お買ものの時や、お店のお交際いには時たまお出かけになります」