Japanische Klassiker mit Furigana
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あぶらじごく
油地獄
斎藤 緑雨
Lesen Sie 油地獄 (あぶらじごく) von 斎藤 緑雨 (さいとうりょくう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.624 Zeichen · 69 Bildschirme
ものゝ手は出せない、去るにも去りかねてしばらく佇んで居たが、見た上は欲いがいよ/\急で、他の素見が立去ったを幸い十銭銀を投り出し、これをと云うと本屋は彼の眼で見て、秘訣ですかと問返した音になお嘲りの分子が含まれて居るようで貞之進はぎょッとしてそうだとの一言が出ず、誰れも知らぬことに顔赭らめ、イヤこれだとその下にあった樺色の表紙を、あわてゝ何の書とも知らず指さすと、本屋は難有うと云って、二銭の剰銭とその書とを取って渡した。貞之進は倉皇に立出たがその本に用があるのではなく、二三丁来てから西洋小間物屋の玻璃戸を漏る燈影に透し視れば、三世相解万宝大雑書とあるので、自分ながらチェッと舌打して、なぜ秘訣の方が取れなかったか、取代えて来ようかと二足三足戻りかけたが戻りきれずに、つまらぬことに八銭失ったをくやんで、ほと/\自分が勇気のないのを歎じた。
宿へ帰って三世相解を懐ろから出したが、そこらへは置けず捨てゝも遣られず、机の抽斗の奥の方へ突込んで、それでまだ秘訣が欲しく、宿の小女に買に遣ろうかと思ったが、すれば本屋に買主の顔は知られぬが、宿に知られるが何よりの不都合と、貞之進は独りむしゃくしゃとして、洋燈の心を出したり引込めたりして居る