Japanische Klassiker mit Furigana
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はたのてい
波多野邸
豊島 与志雄
Lesen Sie 波多野邸 (はたのてい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.194 Zeichen · 45 Bildschirme
彼は男性の矜りを取り戻した。坐りなおして、彼女を眺めた。彼女は伊達巻だけの姿だったが、粗い十字を浮かした大島の着物に、長襦絆のしっとりした縮緬の半襟で、鬢の毛には櫛の歯跡が清楚に見えた。彼は浴衣に丹前を重ねた自分のみなりの襟を合せた。がその後で、悪戯っ児のようにうそうそと笑った。
彼女は彼の顔をひたと見つめた。
「おばかさん……。」
それからがくりと折れるように、上半身の重みを彼の方へよせかけてきた。
「約束のように、出来るかしら。」
「約束なんか、どうだっていいですよ。なるようになるでしょう。」
彼はちらと眉根をよせた。
「少し、飲みたいけれど。」
「どうぞ。わたしも飲むわ。」
彼は卓上の眼鏡をとり、女中をよんだ。
房江は帯をしめてきた。食卓にきちっと就くと、肉附きのよいその体は、磐石を据えたように見えた。彼女は庭を眺めやった。
「静かないい家ね。」
そして庭から彼の方へ眼を移した。
「どうして、こんなことになったのかしら……後悔なさらない。」
「あなたも、後悔しませんか。」
二人はまじまじと眼を見合った。非常にあらわな眼付だが、それでもなにか、互に遠くから見合ってるような工合だった。