Japanische Klassiker mit Furigana
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なきむしこぞう
泣虫小僧
林 芙美子
Lesen Sie 泣虫小僧 (なきむしこぞう) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.906 Zeichen · 70 Bildschirme
啓吉は、なんとなく秘密な愉しさを発見したように、その蟋蟀の上から、小さい植木鉢を伏せて置いた。
空はまぶしいほど澄み透って、遠くまでよく晴れている。光った土の上へ飛白のように落葉が乾いて散らかっていたが、啓吉は植木鉢を伏せたまま呆んやりしていた。
呆んやりしたのはぐらぐらと四囲が暗くなるようなめまいを感じるからだ。どこかでピアノが鳴り始めた。いい音色で木の葉の舞い落ちてゆくような爽やかさが啓吉の肌に浸みて来るのであったが、啓吉は少しも愉しくはなかった。
ぐらぐらとした暗さの中で、啓吉は不図母親の処へよくやって来る男の顔を思い浮べた。その男の顔は、目が大きくて、鼻の頭が脂肪で何時もぎらぎらしている様な顔であった。
啓吉が一番嫌いなのは、平気で母親に向って、「おいおい」と呼び捨てにすることや、けしからんことには、啓吉を「小僧小僧」といったり、全く、この男については何ともいいようのない胸悪さを持っていた。
「啓ちゃん!」
「…………」
「啓ちゃんてばッ、まだ泣いてンのかい?」
「…………」
「しぶとい子供だねえ、そんなとこに呆んやりしてないで、さっさと井戸端でお顔でも拭いていらっしゃい! ええ?」