Japanische Klassiker mit Furigana
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なきむしこぞう
泣虫小僧
林 芙美子
Lesen Sie 泣虫小僧 (なきむしこぞう) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.906 Zeichen · 70 Bildschirme
自分の前へ進んで行く、柱のように長い自分の影を踏んで、啓吉は、学校へ行く時のようにランドセールをゆすぶりながら歩いた。
「おおいッ! あッ、あぶないッ」
誰かが啓吉の後から突き飛ばした。啓吉はよろよろ二三歩前へつんのめったが、前額部をがあんと道へ打つけたと思うと、後はそのまま、暫く何も覚えがなかった。
目の上に海のような空所が見える。血の筋が渦巻きのような模様を造って色々に描かれて行った。
「おおい!」
誰かが呼んでいるようだ。後から鰐のような黒いものが啓吉の背中を突きとばした。啓吉は、痛くて痛くて耐えられなかった。自分のまわりに、色々な顔の人間達が、手をつないで、
「しっかり、しっかり」
と、勢いをつけてくれている。
だが鰐の口が、ガリガリ音をたてて啓吉の肉のなかに食い込まれると、
「痛いよう!」
啓吉は、思わずうなり声をあげた。
自分のうなり声に、思わず瞼をあけると、白い部屋の真ん中に、啓吉は横になっていた。アンデルセンの物語りのなかのように、小さいながら清潔な部屋で、月のような若い看護婦が二人も、啓吉の枕元に立っていた。
枕元には海のように青い空だけ見える窓が一つあった。