Japanische Klassiker mit Furigana
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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
Lesen Sie 泥棒と若殿 (どろぼうとわかとの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.601 Zeichen · 41 Bildschirme
「――はあ、それは気の毒だな」
「いやな挨拶をするなよ、気の毒だったってべつに、おれだってそんなに泥棒なんぞしたかあねえや、まあ食おう、――飯が少しかてえかもしれねえ」
夜になると夜具を並べて寝た。おそろしく疲れたとみえて、男は横になるとすぐ眠りこんだ。大きな鼾をかいたり、どたんばたんと手足を投げだしたり、夜具の外へころげ出たり、無作法きわまる寝かたであった。――成信はいつもの癖で、蚊遣り火を焚きながら、燈火をひき寄せて夜半すぎまで本を読んだ。
明くる朝も男はどこかへでかけたが、出てゆくとき成信に昼食のあるところを教え、今日はなにか魚の干物でも買って来ようと云った。
「ところで名めえが知れねえで不便なんだが、おらあ伝九郎てえんだ、伝九ってえばいいんだが、おめえの名はなんていうんだ」
「――おれか、おれの名は……信だ」
「ただ信だけかい、お侍らしくないじゃねえか、なんのなに信てえわけじゃねえのか」
「――いやそれでいい、信でいいんだ」
「ただの信、さとうただのぶか」
芝居ですれあ碇を背負ってくる役だ、などと、まちがったしゃれを云いながら出ていった。
伝九郎は云ったとおり、その日はちめという魚の干物を買って帰った。