Japanische Klassiker mit Furigana
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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
Lesen Sie 泥棒と若殿 (どろぼうとわかとの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.601 Zeichen · 41 Bildschirme
しかし大殿も先大殿も、その苦しい困難な責任を果された。……気まま安楽に生きたいと思うまえに、自分の責任ということも考えなければならぬであろう。われわれ同志ばかりでなく、一藩をあげてあなたを待っている。みんな手をさしのべるおもいで待っているのである。――久左衛門はこう云って、涙でうるんだ眼でじっとこちらを見まもった。
「お帰り下さい、若殿、お願いでございます」
眼を伏せたまま成信はやや暫らく黙っていた。さっきからみると頬がこけ、眉のあたりに一種の気宇のあらわれがみえる、彼はやがて静かに顔をあげ、あるかなきかに頷ずきながら云った。
「――わかった、城へ帰ろう」
それが聞えたのだろう、前栽の脇につくばっていた四人の者達が、いっせいに芝の上へ手をつき、耐えかねた様に、啜り泣きの声をあげた。
「――伝九郎はおれにとっては、恩人ともいうべき者だ、ゆくすえをくれぐれも頼む」
「必らず御意どおりにつかまつります」
「――おれは明日ひとりで帰る、彼とひと夜なごりをおしみたい、今日はこれでひきとるように」
成信はかれらが去ってからも、ながいことそこに坐っていた。それから庭へ出てゆき、荒れはてた邸内をあちらこちら歩き廻った。