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Japanische Klassiker mit Furigana

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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

Lesen Sie 海に生くる人々 (うみにいくるひとびと) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 161.305 Zeichen · 321 Bildschirme

Aozora Bunko

なぜ、たった九ノットの速力でゆれるかといえば、わが万寿丸は、なるべく多く石炭を頬ばるべく、デッキから、ボットムまで、どちらを向いてもガラン洞で、支柱がないためなのだった。それはフットボールの内部のようなものだった。

冬期の北海道は霧がはなはだしかった。汽船で鳴らす霧笛、燈台で鳴らす号砲のような霧信号。海へころがり込んだフットボールのような万寿丸は、霧のために、目隠しをされたものであるから、九マイルの速力をどうしても、もっと下げなければならないはずであった。けれどもそれは、正月のことを考える時に、船長はこれから上速力を下げるわけには行かなかった。その代わり彼はむやみやたらに霧笛を鳴らした。

それは何かの事変の前兆を知らせるという、犬の遠ぼえに似ていた。それを聞くものに、きっと不安な予感に似たものを吹き込まねば置かぬ音色であった。同じ汽笛でも、出帆の汽笛は寂しく、入港の汽笛は、元気よく勝ち誇ったように聞こえるものだ。霧笛の場合は同じ汽笛でも、不吉な、落ちつかない、何だかソワソワした気持ちに人を引き込んだ。自らその糸をひいている船長自身が、その音色に追っかけられるようにあとからあとからと、糸をひいた。