Japanische Klassiker mit Furigana
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つなみのあと
海嘯のあと
田中 貢太郎
Lesen Sie 海嘯のあと (つなみのあと) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 974 Zeichen · 2 Bildschirme
それを見ると壮い漁師の心は暗くなった。
(いくらなんでも、これじゃ)
町の後になった丘の中腹には、海嘯のために持って往かれた発動機船や帆前船が到る処にあった。
(やっぱり死んだのか)
壮い漁師は溜息をついた。と、その眼の前へふらふらと寄って来た物があった。それは向うから来た女で、壮い小づくりなその顔が月の光に浮んでいた。
「おう」
壮い漁師は飛びつくようにして女のほうへ往った。女は眼に黒味の多い女房であった。
「生きてたのか、おまえは」
壮い漁師の心は歓喜に顫えていた。
「おれは、あれから探しまわった」
壮い漁師は夢中であったが、その女はそのままするするとすれちがった。
「おい、どこへ往く」
壮い漁師はあの騒ぎのために気が狂って己の顔を忘れているのではないかと思った。
「おい、俺だよ、おれだよ」
壮い漁師は女房の名を呼んだ。
「――、家はそっちじゃない、どうしたのだ」
壮い漁師は女房の肩に手をやろうとした。と、女はちらと揮りかえった。そして、所天の顔を見て莞としたが、そのまままた見えなくなった。