Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいりゅう

海流

宮本 百合子

Lesen Sie 海流 (かいりゅう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.977 Zeichen · 72 Bildschirme

Aozora Bunko

父親と話している時の母とは違う空気、父と母と富岡とが三人で喋っているときにもない何かが、父のいない土曜日の晩の富岡と母との話しの間には漂った。宏子の感覚はそれに刺戟されるのであった。

そういう晩、その頃生きていた一番末の四つの弟が泣き出す。泣く声が客間まで聴えて来ると、宏子はいつも絶望的にがっかりした。瑛子は、

「おや、敬ちゃんが泣いているよ、宏子、ちょっと」

と云った。きまって、そうであった。宏子は客間を出て、二階の両親の寝室へ行って豆電燈がともっている薄暗い中で、目ざとい小さい弟をなだめて、眠るまで子守唄をうたっていてやらなければならない。宏子は、客間へとんでゆきたい自分の心をやっと押えながら、ああちゃーんと泣き立てる弟をおさえつけ、そんなに泣くと狼が来るわよと嚇した。狼いやーんと弟は泣く。弟が眠るまで、母の蒲団の上に横になってついている宏子の耳に、微かに客間から母と富岡の笑い声が響いて来る。その笑い声は楽しそうであった。いかにも活気が溢れていて、宏子はどきどきする心臓が口からとび出そうに切なかった。涙も出ない。やけつくように体じゅう苦しかった。