Japanische Klassiker mit Furigana
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かいりゅう
海流
宮本 百合子
Lesen Sie 海流 (かいりゅう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.977 Zeichen · 72 Bildschirme
今に重吉が井沢郡から代議士にうって出て見ろ、最高点をとるにきまっとる、と云う周囲の焙りつくような待ち遠しい目を身に受けながら、重吉は寡黙に、快活に温い頑強さで、自分がそれらの人々の希望している通りの者には決してならないことを自覚して暮しているのであった。
重吉は、故郷の家の有様を思いながら、白カナキンの日よけのかかっている窓越しに外を眺めた。表通りの紙屋と豆腐屋の裏が重吉の窓に向っている。豆腐屋の裏二階の羽目はどういうわけかあくどい萌黄色のペンキで塗られていた。何年もの風雨で曝され、もはやはげかかっているその色が今日の荒々しい灰色の空の下では、佐伯祐三の絵にあるような都会の裏町の趣を見せている。同じ都会の或る庭では竹藪を吹きざわめかせる季節はずれの南風は、重吉の部屋の在る町あたりでは、時々どっかでガワガワとトタンの煽られる音を立てている。表通りから細かい砂塵がガラスに吹き当てられた。重吉の故郷の家も、思えばこんな荒天に難航している小舟に似ていた。父親の源太郎が中央に突立って叱咤しているのであるが、その人自身絶望から希望へ、希望から絶望へと絶えずつきころがされて来た。