Japanische Klassiker mit Furigana
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かいひんいちじつ
海浜一日
宮本 百合子
Lesen Sie 海浜一日 (かいひんいちじつ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.953 Zeichen · 8 Bildschirme
「駄目かい?」
「はあ――どうしたんでございましょう。一寸動きましてやれうれしやと存じましたら、またとまってしまいまして」
みわは、そう言いながら煎じ薬を茶碗についで母にすすめた。
「なに、御自分がわるいのさ――お前にはとんだお気の毒だね、こんなとこまで来て水汲みまでさせちゃ」
みわは、小作りな女で何だか見当が違っているような眼つきであった。
「まあとんでもございません。ちょこちょこと致せば何のこともありは致しません。――私も北海道なぞとあんな遠いところへつれてっていただきましたが、東海道は始めてでございますから――こんな結構なところ拝見させていただきまして」
佐和子は、それをきき、みわや両親が憐れになった。みわは十七位のとき、まだ赤坊であった佐和子の世話をして、これもまだ若夫婦であった両親と任地の北海道まで行った。三十年位の歳月は一方に別荘を作らせたが、みわには額の皺とただ一枚の白い前掛を遺したに過ぎぬように感じられた。しかもみわは、もっと若々しく、貧乏であったが健康で怒ることの尠い妻だった母を見て来たのだと思うと、佐和子は森とした寂しい心になった。