Japanische Klassiker mit Furigana
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かいじんにいのる
海神に祈る
田中 貢太郎
Lesen Sie 海神に祈る (かいじんにいのる) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 26 Bildschirme
松蔵の話がはじまったところであった。
暫くすると其の人夫の中に、不意に口を開けて黄色な歯を見せる者があった。何かを笑っているところであろう。権兵衛は眼を見すえた。見すえる間もなく、人夫は松蔵の傍を離れて散らばって往った。総之丞は権兵衛に呼びかけた。
「話がすんだようでございますが」
「うん」
権兵衛は人夫の方から眼を放さなかった。総之丞もそれに眼をやった。人夫はまた右側の礁の方へ往って、どっかんどっかんとやりだしたが、釜礁にかかる者はなかった。
「かからんようでございますが、話が判りますまいか」
「判らん、困ったものじゃ」
「愚な者どもでございますから、物の道理が判りません」
「うん」
権兵衛は眼をつむっていた。総之丞は口をつぐんだ。陸の方から堰堤の上をどんどん駆けて来た者があった。普請役場の小厮に使っている武次と云う壮佼であった。
「旦那、一木の旦那」
武次は呼吸をはずまして額に汗を浸ませていた。権兵衛は武次を見た。
「何か用か」
「用どころか、お殿様じゃ」
権兵衛は眼をった。
「なに、おとのさま」
「二十人も三十人も馬に乗って、氏神様のお神行のようじゃ」
「藩公が来られたか」