Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいなんき

海難記

久生 十蘭

Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

に描かれているのは、事実とは似てもつかぬアトリエ出来の浮きあがったような情景にすぎない。習作のほうは画面の調子が沈鬱で、人物の心理的な陰影がほどよく滲みだし、いくらか実相に近づいているが、それとてもさほどに騒がれるほどのものではないのである。ジェリコォはそれから間もなく馬から落ちて大怪我をし、以来、癲狂院へ行って狂人の肖像ばかりを描いていたが、五年もたたぬうちに三十二歳で死んでしまった。世間では神の罰を受けたのだといった。

ラ・メデュウズ難破にたいする文献と記録は二つに大別され、難破前後の航海記事、漂流中の覚書、報告、公文書、警備隊の駐留日誌の類は「セネガル文庫」に、ロシュフォール軍港で行なわれた軍法会議と海事審判の公判記録、訊問調書の一切は「ロシュフォール記録集」にそれぞれ収輯され、難船から関係者の帰国までの顛末が微細な点にわたって洩れなく解析されているようにみえる。海難から救助までの事変の梗概は、いかにも首尾一貫していて、誰でも容易に納得するのだが、いざ調べる気になって精読しだすと、随所にモヤモヤした不分明なところが出てくる。よく晴れているくせに、どこかはっきりしない四月頃の空模様とでもいうように、すべては明白に解説されているにもかかわらず、記録の紙面の上に、眼に見えぬ靄のようなものが立迷っていて、