Japanische Klassiker mit Furigana
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かいなんき
海難記
久生 十蘭
Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme
木工長のラヴィエットがサン=ルイの病院で書いた覚書によると、この日、前夜の闘争にひきつづいて一層猛烈な惨劇が行なわれたのである。サヴィニ軍医補と一部の陸軍将校は、かねて冗員の整理を計画していたが、サヴィニの発議で実行にとりかかった。
「今日の現在で、食糧は十二尾の飛魚と四日分の葡萄酒だけだ。あれらの十五人は助かるわけはないのだから、あれらを整理すれば食糧の配分が二倍になる。思いきってやってしまおう」
シャルルという黒人兵の輸卒と三人の海兵がその仕事を引受けた。二人の海兵が木工長を始末しに来た。ラヴィエットは先頭の一人をおさえつけ、頭を水の中に突っこんで窒息させ、もう一人の海兵から銃剣を奪って脳天を叩き割った。サヴィニ軍医補はラヴィエットの意外に決然とした態度にけおされ、君は助けてやるから冗員整理の手伝いしてくれといった。覚書には「勿論、私は拒絶したが、しかし」と苦しそうな弁解を試みている。
刑手達は、予定の方針に従って、整然と冗員を始末していた。その中には、二十年も軍隊といっしょに戦場を経めぐり、兵隊達に慰安を与えてきた心の優しい酒保婦もいた。亭主のほうは頭に重傷を負って居り、自分のほうは筏材に挾まれて足を挫いていた。