Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Lesen Sie 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) von 富田 常雄 (とみたつねお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.806 Zeichen · 36 Bildschirme
「出ねえ事はあるまい」
「妾に体を張ってもいいと言うの」
勇は片頬に冷笑を浮べる。急に湧いた嫉妬が彼に自己暗示を与えたのだ。
「ふん、今迄の銭だって、お前の口一つとは思って居なかったんだ」
「そう……妾もいい役廻わりさね。そう思われてまで苦労をするなんて」
「いいやな、今度の五千さえ出来れば、俺も一かばちかの運試しをして、すっぱり止めるからな」
ミチは返事をしなかった。彼女は男の為に、当てにはならなくても、この最後の金を調達しようと思った。それには藤三に当るより他ないのだ。十八歳の智慧である。勇は返事もせずに、急に押し黙ったミチに対して起って来た疑惑と嫉妬に苦しみながらも、金銭に対する執着がミチを追求させなかった。それで居て、彼はその夜、疑惑に苦悶して殆んど眠らなかった……。
竹の湯が休業なのを承知して居ながら、ミチは手拭と石鹸を持って家を出た。夜は未だ明けて居なかった。藤三は母屋と離れた昔は石炭と薪を入れてあった物置の南と東に窓をつけた、粗末な小屋に住んで居た。夜明けの薄明が窓から流れ込み、藤三はミチの硝子窓を敲く音に眼をさまし、引戸をあけた。藤三は布団を脇に押しやり、貰いものの外国煙草に火を点け、もう一本を彼女に差し出しながら、