Japanische Klassiker mit Furigana
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りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme
「予期したより早く父が死んだので、ニコラスは未熟のまま帝位についたが、生来の不決断な性情を残りなくさらけだし、朝、命令して、夕方、文書で撤回するようなこともしばしばだった。純情で敬虔な本性なのに一種陰鬱な片意地なところもあって、相手の態度が気にさわるとものもいわなくなる。彼の信任を得たと確信できるものは一人もなく、大臣だって心をゆるせない。いっこう聴かれない進言に倦んじて、皇族さえ日に日に彼をうとんじるようになった」(クールロフ「ニコラス二世の回想」)
一九〇五年五月十四日、対馬沖でバルチック艦隊が全滅した。これは敗北以上で、ロシアにとってはまさに災厄ともいうべきものだった。ニコラスはラケットを持ってその報告を聞いていたが、「なんというひどい敗北だろう」と一言いってまたゲームをつづけた。その日のニコラス二世の日記。
「ツシマ沖の不運な海戦。メランコリックな気分。矛盾だらけの報告。三つのちがう報告を聞いた。ママと二人で散歩。快晴。バルコンでお茶と夕食」
この日記には世襲制のために天分もなく帝位につき、現実を逃避して家族だけが幸福であればいいとねがっている優柔不断な人間がむきだしに出ている。