Japanische Klassiker mit Furigana
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りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme
真実の味方もなく、一人の友も与えられず、官僚は信じられず、露国社会党のテロリズムはたえず心霊をおびやかしつづける。父は恐怖と懐疑に悩み、なにか大きな奇蹟をのぞんで得態の知れない霊感にたよりだしたのも、またやむを得ないことだったと思います。
ラスプーチンがアレクシスの病気を癒したというのは嘘です。あのひとが来る日にはアンナ(ウィルゥボヴァ)が前もってアレクシスの食べものへこっそりクロール・カルシュームを入れて置いたのにすぎません。
それにしてもラスプーチンのデビュウは滑稽なものでした。
「ここにマッチの小箱がございます。私はアレクサンドラ皇后が、それを持ちあげることが出来ないと申します。なぜなれば、それは一噸以上の重みがございますから」
母はおずおず手を伸してマッチの箱に触れた拍子に、手が硬直して動かなくなりました。あのひとは図に乗って、「どうか皇帝も」といいましたが、もちろん父は手もだしませんでした。場末のサーカスか市場の魔術師でもやりそうなことを大真面目でやるので、あたしたちは思わず笑いだしてしまいました。
母が我意が強いこと、自分のことのほかはなににたいしてもすこしの感情も動かさないことは前に書きました。