Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りんらくのこうじょのおぼえがき

淪落の皇女の覚書

久生 十蘭

Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

あたしたちにはアレクシスさえあれば、そんなものはどうだっていいじゃありませんか」といいかえしました。父は額ぎわまで赤くなって、「あまりいろいろなことが隠されすぎているようだ。私は真実を知りたいのだ。どうだね、言ってくれないか」と今日ばかりはたやすく許しそうもない語気なので、母は、「なにをおっしゃるんですか」と突っ張りだしたものの、声が震えてよく聞きとれませんでした。こういう場合、いつも母の危急を救うのはアンナにきまっているのですが、そのときも、いきなり飛びこんできて、「ツアレヴィッチ(皇太子)がまた血をだしていられます」と大きな声で叫びました。

これでごったかえされ、母はなにかひどく辛そうな立場を救われました。父は二度と宝石のことは口にしませんでしたが、このことがあってから、母にたいする父の態度は、慇懃なばかりで心の籠らない形式的なものになりました。

父と母の関係はこういう状態でくすぶったまま、ペテルホフにいる間じゅう、ツァルスコイエ・セロのアレクサンダア宮の監禁を経てトボルスクからエカテリネンブルグの最後の日までつづいています。その頃、父や母といっしょに先にエカテリネンブルグへ行った妹のマリーヤからこんな手紙を受取りました。