Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme
ニコラスは下級の兵隊にも謙虚な態度で接し、平静な日常を送っていたが、アレクサンドラ皇后のほうは日ましに沈鬱になり、部屋の壁に卍を描きちらしてこれは幸運の表象だなどと口走り、気がむくと一日じゅう机に向って回想録のようなものを書いていたが、宗教的な回想に属するものばかりで、あまり神秘的すぎて誰にも理解できないような事柄が多かった。
アレクシスは自分の病気と闘うのがいそがしく、不幸な境涯の意味を理解する暇もなく、その点では七人のなかでいちばん幸福だといえたが、四人の若い皇女たちのほうは前途を洞察してひどい絶望におちいり、発狂しないために殊更快活に振舞っていると、労働者あがりの赤衛兵はなにか感ちがいをし、卑穢な冗談をいいかけ、春画を突きつけて追いまわしたりするようなひどいことになった。
七月に入ると急に暑くなった。なにより苦痛なのは風呂に入れぬことで、洗濯はもちろん身体を拭く水も呉れないので、下着も寝具も垢と汗にまみれ、密閉した部屋のなかにいいようのない臭気がたちこめ、湿度の高い日などは窒息するかと思われるほどだった。アレクシスは暑気と悪い空気に疲労してほとんど眠らず、廃帝はアレクシスを抱いて部屋から部屋へ朝まで歩きまわっているようなこともあった。