Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅうかんそうわ
清修館挿話
林 芙美子
Lesen Sie 清修館挿話 (せいしゅうかんそうわ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.062 Zeichen · 20 Bildschirme
谷村さんは、まず、御飯を頬ばつたまゝ、その長い髪の毛を小さく剪つて、顕微鏡でそつと覗いて見ました。かなり鉱物性の油がついています。鎖のような細胞が、芋虫のようにひつくり返つて、さながら「私は太つちよの下女の方でございますよ」と、云つているようでありました。
谷村さんはムカムカする胸をおさえて、出がらしの冷い番茶をガブガブ呑み込むと、そゝくさと、帽子を被つて、広い廊下を歩いて玄関へ出ました。
玄関では、丁度太つちよの下女が、谷村さんの靴を磨いていました。
谷村さんは、昨日越して来た時に一人ずつにやつた五拾銭玉のきゝめであつたのであろうと思いましたが、蜆汁の中の長い髪の毛の事を思うと、ふと憂愁がこみ上げて来ました。
「お早うございます。昨夜はよくお休みになれましたか?」
「なぜ?」
「でも……初めて越して来た方は眠られないものだそうでございますよ」
「そうかね僕はよく寝られた」
谷村さんはグッと押し上げる不快さを隠して、太つちよの下女がそろえてくれた靴に足をかけました。と、まだその下女は朝の髪に櫛を入れないのでありましよう、蓬々として、朝風に何日も洗わない臭い匂いをたゞよわせていました。