Japanische Klassiker mit Furigana
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しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme
未亡人は勿論、信子も、彼女を受取った彼女の両親達も、処置の適当な事で、満足していた。正隆が狂気、或は少くとも、頭のどこかに狂いが来ていることを認めている周囲は、誰一人として彼女の取捌きに苦情を云うものはなかった。さすが、佐々の未亡人だけある、義理が堅い、という賞揚が、彼女の周囲に渦巻いた。彼女自身もまた、勿論、その義理堅いことを自信して疑わなかったのである。
けれども、彼女が、それほど速刻に、信子夫人の離婚を承認した、むしろ、勧告したということには、何か、もう少し複雑な原因があった。それは、彼女自身も、自覚しなかったことかも知れない。が、然し、永年、彼女の唯一の寵愛物(ペット)として、正隆に、彼女のあらゆる感情を注ぎかけていた未亡人は、彼の結婚によって、或る埒外に置かれた自分を見出さずにはいられなかった。彼女は、勿論、正隆の幸福を希っているだろう。それ故、彼女は、自身に感じられる悪いと思う感情は、一種の自尊心から覆いはしていても、正隆を、生活の対象として失った彼女は、或る物足りなさを感じることは、否定出来ないのである。
佐々未亡人は、彼女の賢さによって、足掛四年、その影の感情を、統治(コントロール)して来た。