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Japanische Klassiker mit Furigana

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しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme

Aozora Bunko

どうだろう、ほんとに、兄、兄貴なのだろうか。

正隆は、我にもなく溜息を吐くのである。

けれども、正隆の目前に、まざまざと浮んで来る長兄の、彼とは正反対に分厚な、正直そうに丸い、微笑に満ちた表情を想うと、彼は、決定しかねる。

亡父に生写しだといわれる中年の、成功と、愛とで寛大に広がった額の所有者である長兄の、見えない宙に、どっしりと据った像を取り囲んで、やや暫く徘徊する正隆の、怨霊のような疑いは、もう一息という処で、いつも、動し得ない何物かにぶつかって引退る。その敗北を、喜びと安堵と、半ばの口惜しさに見返りながら、蛇の頭は、またするすると、第三の人影に窺い寄ろうとするのである。

このようにして、日に幾度となく這い廻る、正隆の模索は、結局、幾百度繰返しても、要するに模索という程度を越すことはなかった。それに拘らず、疑わずにはいられない彼は、探究の失敗で、懐疑の根を洗われてしまえない彼は、さんざん彷徨(さまよ)い歩いた末に、いつも定って、何か非常に不確(インデフィニット)な、漠然とした一種の人格が、自分を絶えず付け狙って、悪意の籠った羂(わな)を張っているに違いない、という処に落付くのである。