Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme
「奥さん、何のためにこれを下さるのですか?」
と云った。
思わず眼を瞠って良人と視線を交した夫人は、それでも社交に馴れた笑を忘れずに、
「まあお若い方は、理屈っぽいこと、何でもない、ほんのお口直しか、お口穢しでございますわ」
「そうですか――然し、奥さん、奥さんは、私がこんな作法を知らないことは、始めから御承知なんでしょう。御承知でありながら、何故、私の知らない、知らないから飲めもしないものを、下さるのですか?」
ここまで来ると、さすがの副島夫人も顔の色を変えた。正隆を見た眼を反らして、凝と彼方を見ていた夫人は、暫くすると、殆ど、命令するように、はっきりとした口調で、
「どうも、お気の毒を致しました」
「それでは、失礼でございますが、御免を蒙って、貴方」
夫人は、眉を上げて、駭(おどろ)きと不快で、度を失っている良人を見た。
「お廻し下さいませ」
この夫人の態度が、正隆の言葉に解くことの出来ない封印をしてしまった。
その座敷に戻りはしても、もう瞳も定まらない正隆は、碌な挨拶もしないで、飛び出してしまった。この不意の出来事で、最初、副島氏が漠然と胸に持っていた、保養の勧告は、緒口も出ないで、立ち消えとなったのである。