Japanische Klassiker mit Furigana
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たにさんだい
渓三題
木暮 理太郎
Lesen Sie 渓三題 (たにさんだい) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.066 Zeichen · 12 Bildschirme
行手を見上げると、黒木立の間から岩崖の露出した幾重の山裾がのし懸るように重り合って稀に入り込む人を威嚇せずには置かないであろう。谷が著しく険悪の相を呈して来るのは、多くの場合闊葉樹林を離れて針葉樹林に移るあたりから始まる。しかし私は其探検の筆を他日に譲って、今は此処から引返すことにする。
最後に両岸の地形は、見免すことの出来ない要素である。清澄な水と深い森林とがあれば、谷川の趣は具わるとはいうものの、活躍する水の姿態は終に見られず、従って変化に乏しい憾があり、豪宕の偉容に接することを得ないであろう。若し両岸に岩石を露し、それが時としては聳抜して、懸崖となり絶壁となり、谷の屈曲につれて、屏風を拡げるように展開したならば、渓谷の相貌は見違える程立派になる。そして岩が大峡谷の構成に最も適した花崗岩であり、絶壁の高さが増し長さが加わり、崖上に樹林を纏い、藍の水が一道の迅流となって、百仭の谷底を駛走するに至って、始めて壮絶凄絶の極に達する。黒部川は即ちこの代表的に発達した峡谷の標本である。
近年登山が盛んになって、山に登る人は幾万を数うる程であるが、谷に入り込む者は極めて少ないので、目ぼしい山は殆ど登り尽されてしまったけれども、多くの谷は全く処女の谷として残されている。