Japanische Klassiker mit Furigana
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とせんば
渡舟場
豊島 与志雄
Lesen Sie 渡舟場 (とせんば) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.509 Zeichen · 24 Bildschirme
体の疲労も一時に忘れた。
然るに、この家の中に私が見出したものは、大勢の群居生活だった。川原にせよ中村にせよ、私にとって見ず識らずの他人ではなかったが、それでも他の家庭の者たることに変りはない。それらの人々が、食膳を共にし、朝から晩まで鼻をつき合せているのだ。起きてから寝るまで、互に挨拶を交わし、何かの応待をし、顔を見合っている。自分だけの場所、自分だけの時間というものを、誰も持っていない。もとより居室はそれぞれ別であるが、日本家屋というものは、殊に平家建てのそれは、甚だ開放的であって、室は室としての独立性を持たない。だから家中の者すべてが殆んど同室雑居に近い状態となる。各自の一隅というものがそこでは無くなる。如何なる社会的共合生活に於ても、各自の魂の憩い場所となり肉体の安息所となる一隅は存在すべきであって、それが無い時、共同生活は単に動物的群居生活に堕するであろう。
俺が驚歎したのは、この中に母が平然と安住していることだった。母にとっては長火鉢のそばに自分の座席さえ一つあれば、周囲で人々が如何に右往左往し混雑しようと、一向平気なのであろう。周囲の混雑をも一種の風景として見ているのであろう。