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Japanische Klassiker mit Furigana

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とせんば

渡舟場

豊島 与志雄

Lesen Sie 渡舟場 (とせんば) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.509 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

そういう眼眸に、俺は時折出逢うことがあった。そのような時、妹はなにか空虚のなかをさ迷っていたのであろう。その空虚は、遠くに在るのではなく、自分の心の中に在る。俺の心の中にもそれが在る。何かが崩壊して、その後に出来た空虚なのだ。何がいったい崩壊したのか。ただ人間的なものというだけで、まだ俺にはよく分らない。終戦後に俺はそのことを漠然と感じた。今はも少しはっきりとそのことを感ずる。妹もそのことを感じてるに違いない。妹のあのしばしばの涙はそこから来るのであろう。

このような妹に対して、川原浩一はよくもあんなことが言えたものだ。たとい愛情の表白にしても、椿の蕾だとか、椿の花だとか、手近にあったものにもせよ、よく言えたものだ。牡丹の花とは限らないが、梅の花とか桜の花とか、せめて水仙の花ぐらいならまだよい。椿の花なんか、赤い頬をした肥っちょの田舎娘の表徴ではないか。

川原の両親にしても、言うことが少しく出鱈目すぎる。俺の消息が途絶えてから、母がすっかり気落ちしてしまっただの、妹が泣いてばかりいただの、いろいろのことを言うが、母も妹も実はしっかりしていたことを俺は本人たちから聞いた。