Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とせんば

渡舟場

豊島 与志雄

Lesen Sie 渡舟場 (とせんば) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.509 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

まだ小さい頃、両親に連れられて、箱根に旅したり、那須に旅したりした時のことが、ぽつりと思い出された。亡くなったお父さんのことが思い出された。死亡もまた一つの旅ではあるまいか。そうとすれば、お父さんは一人で旅に出てしまわれた。私もお父さんのように、一人きりで旅に出たかった。山や川や海のさまざまな景色が、次から次へと展開してくるだろう。私はその中に溺れてしまい、何もかも、悲しみをさえ、忘れてしまうことだろう。

私はいつしか涙ぐんでいた。涙はもりあがって、瞼から溢れそうになった。袖口でそっとそれを拭いた。私は涙を兄さんに見られるのが嫌だった。けれどその心配はなかった。兄さんは私たちから少し離れて、河岸をぶらついていた。なにかじっと考えこんでいるようだった。

兄さんが考えこんでる時は、怒ってるようにも見える。怒ってる時は、考えこんでるようにも見える。どうしてああなんだろう。それが私には淋しい。

兄さんは今、どこにいるのかしら。何を考えてるのかしら。煙がまた眼にしみて、涙が出てくる……。

八重子の兄の岩田元彦は、河の縁を逍遙していました。そして考えていました。