Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
Lesen Sie 渾沌未分 (こんとんみぶん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.232 Zeichen · 33 Bildschirme
こどもの時分から一人娘を水泳の天才少女に仕立てるつもりの父親敬蔵は、かなり厳しい躾け方をした。水を張った大桶の底へ小石を沈めておいて、幼い小初に銜え出さしたり、自分の背に小初を負うたまま隅田川の水の深瀬に沈み、そこで小初を放して独りで浮き上らせたり、とにかく、水というものから恐怖を取り去り、親しみを持たせるため家伝を倍加して小初を躾けた。
水中は割合に明るかった。磨硝子色に厚みを保って陽気でも陰気でもなかった。性を脱いでしまった現実の世界だった。黎明といえば永遠な黎明、黄昏といえば永遠に黄昏の世界だった。陸上の生活力を一度死に晒し、実際の影響力を鞣してしまい、幻に溶かしている世界だった。すべての色彩と形が水中へ入れば一律に化生せしめられるように人間のモラルもここでは揮発性と操持性とを失った。いわば善悪が融着してしまった世界である。ここでは旧套の良心過敏性にかかっている都会娘の小初の意地も悲哀も執着も性を抜かれ、代って魚介鼈が持つ素朴不逞の自由さが蘇った。小初はしなやかな胴を水によじり巻きよじり巻き、飽くまで軟柔の感触を楽んだ。
小初は掘り下げた櫓台下の竪穴から浅瀬の泥底へ水を掻き上げて行くと、岸の堀垣の毀れから崩れ落ちた土が不規則なスロープになって水底へ影をひくのが朦朧と目に写って来た。