Japanische Klassiker mit Furigana
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こなんのおうぎ
湖南の扇
Lesen Sie 湖南の扇 (こなんのおうぎ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.079 Zeichen · 19 Bildschirme
それは支那服の青年の外にも見事に粧った支那美人を二三人乗せたボオトだった。僕はこれ等の支那美人よりも寧ろそのボオトの大辷りに浪を越えるのを見守っていた。けれども譚は話半ばに彼等の姿を見るが早いか、殆ど仇にでも遇ったように倉皇と僕にオペラ・グラスを渡した。
「あの女を見給え。あの艫に坐っている女を。」
僕は誰にでも急っつかれると、一層何かとこだわり易い親譲りの片意地を持合せていた。のみならずそのボオトの残した浪はこちらの舟ばたを洗いながら、僕の手をカフスまでずぶ濡れにしていた。
「なぜ?」
「まあ、なぜでも好いから、あの女を見給え。」
「美人かい?」
「ああ、美人だ。美人だ。」
彼等を乗せたモオタア・ボオトはいつかもう十間ほど離れていた。僕はやっと体をじまげ、オペラ・グラスの度を調節した。同時に又突然向うのボオトのぐいと後ずさりをする錯覚を感じた。「あの女」は円い風景の中にちょっと顔を横にしたまま、誰かの話を聞いていると見え、時々微笑を洩らしていた。顋の四角い彼女の顔は唯目の大きいと言う以外に格別美しいとは思われなかった。が、彼女の前髪や薄い黄色の夏衣裳の川風に波を打っているのは遠目にも綺麗に違いなかった。