Japanische Klassiker mit Furigana
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こはん
湖畔
久生 十蘭
Lesen Sie 湖畔 (こはん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.180 Zeichen · 47 Bildschirme
この罪は秩序罪で、大罪というのではない。二年位いの懲役ですむから、その方は大して不都合はないとしても、事情を述べる段になると、俺の卑劣臆病な性情、軽薄浅膚な虚飾心が底の底まで評隲摘抉され、ありありと白日の下に曝らされねばならぬ。そればかりはなんとしても耐えられることでないから、それが厭なら、あくまでも殺人犯人になりすまし、これこそは俺が手にかけた当人の死体だと証言しなければならぬ。水死人の方はずいぶん迷惑だッたろうが、これは俺によって首を締められ、俺によって湖水へ投げ込まれた妻の死体だと、ついつい承認してしまッた。巡査を始め、一同の者は、非常に満足していた。
俺は奥へ戻って膨れッ面で坐っていたが、フト心中に萌した疑念のために、胸を刺貫かれるような思いがした。あの見苦しい肉塊は、真実、陶の死体ではないのか。死体は深良川の傍で上ったということだッたが、俺のボートが見えなくなってから、陶がそこへ身を投げたのではなかろうか、というその疑念である。陶は従順な一面、非常に思い詰める性情だッたから、それ位いのことはやりかねない。俺は陶を殺してはいないのだから、今迄は死骸を見てもなんの感情も惹起きなかったが、陶が投身したかも知れぬということになれば、話はまた別である。