Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こはん

湖畔

久生 十蘭

Lesen Sie 湖畔 (こはん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.180 Zeichen · 47 Bildschirme

Aozora Bunko

「貴君を殺して妾も死ぬつもりで来たンですから、もう名聞なんかどうだっていいんです。ねえ、どうか一緒に死んで頂戴」

と言いつつ、帯の間から鞘のまま短刀を抜きだして見せた。

世に能弁利口、人に取入ることの巧妙な者があって、それが千万言を費そうとも、陶の一言ほどには俺の心霊を振蘯させ得なかッたろう。俺は真実陶に愛されていたことを、この時率然とコンプレヘンドした。俺の筆をもってしては、この時の感情は描出すことが出来ぬ。仮りにバイロン、ギョエテの如き名筆を持っておったとしても、同様に不可能だッたろうと思われる。

俺は嬉しさのあまり泣いていた。陶がハンカチで度々俺の涙を拭ってくれていたようだッた。俺は子供が大切な玩具でも握っているように、無闇に力を入れて陶を抱き締めながら、

「よく戻って来ておくれだッた。俺は貴様に逢いたくて、今もそこで泣いていたンだぞ」

と埓もなくおなじことを繰返していたそうだ。陶が笑いながら今でもその真似をして見せる。

二人は縺れ合うようにして林の奥の小屋に行き、そこで交媾した。立木を柱に取って板屋根を差掛けた掘ッ立小屋で、入口が土間になり、四、五畳の古畳を敷いたところに居炉裏が切ってある。