Japanische Klassiker mit Furigana
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まんかんところどころ
満韓ところどころ
Lesen Sie 満韓ところどころ (まんかんところどころ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.601 Zeichen · 148 Bildschirme
橋本は帳面を見るや否や、向を向いて澄ましている。余は仕方がないから、書くには書くが、少し待ってくれと頼んだ。すると御神さんが、そうおっしゃらずに、どうぞどうぞと二遍も繰返して御辞儀をする。無論嘘を吐く気は始めからないのだが、こう拝むようにされて書いてやるほどの名筆でもあるまいと思うと、困却と慚愧でほとほと持て余してしまう。時に橋本が例のごとく口を利いてくれた。この人は嘘を云う男じゃないから、大丈夫ですよ今に何か書きますよと笑っている。余はまた世間話をしながら、その間に発句でも考え出さなければならなくなった。
同情してくれる人はだいぶあると思うから白状するが、旅をして悪筆を懇望されるほど厄介な事はない。それも句作に熱心で壁柱へでも書き散らしかねぬ時代ならとにかく、書く材料の払底になった今頃、何か記念のためにと、短冊でも出された日には、節季に無心を申し込まれるよりも苛い。大連を立つとき、手荷物を悉皆革鞄の中へ詰め込んでしまって、さあ大丈夫だと立ち上った時、ふと気がついて見ると、化粧台の鏡の下に、細長い紙包があった。不思議に思って、折目を返して中を改めると、短冊である。