Japanische Klassiker mit Furigana
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ためいきのへや
溜息の部屋
山本 周五郎
Lesen Sie 溜息の部屋 (ためいきのへや) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.369 Zeichen · 15 Bildschirme
そして帰って来たとき、安土竜太郎も米山八左衛門も、深い奇妙な光を両の眸子に湛えていた。
根来八千代は年の頃二十三四で、やや肥りじしの眼の細い、頬の紅い小柄な女だった。無雑作に女性を二つの型に分類したがる人たちの言葉を藉りて云えば、正しく彼女は母型に属すべきタイプであろう、際立って美しくない代り、ひと眼で誰にも好感をもたれる人柄だ。そして彼女にはいつも良人が付いていた。
彼女に良人のあることなどは、無論このブラフ・シネマの者たちには何の影響でもなかった。そればかりでなく、彼根来勇助が描かぬ貧乏画家で、ひどく進んだ肺病患者であることを知ると、八千代に対するみんなの好感が、一種の尊敬にさえ変っていったくらいである。勇助自身は自分の病気を肋膜の痼疾だと云っていたが、そんなことを彼が自分でも信じていないくらいは、誰にも理解することができた。
根来勇助はいつも八千代と一緒に楽屋へ現れるか、でなければ一足先に来て、炉端の古椅子にかけては陽気な雑談を楽しんでいた。そして八千代がその日の歌を終ると、気の良いオールボアルを叫んで帰ってゆくのだ。
さもあらばあれ、この灰色の室はめざましく変化を続けた。